出会いと会の設立について
エレガントフラッグは2023年の秋まで出産と子育てを頑張っていた元繁殖牝馬です。5歳で競走馬を引退して北海道に戻り、
翌年から13年間ほとんど休みなく11頭を出産してきました。
出産が近い繁殖牝馬の平均体重は600kgを超えるそうです。エレガントフラッグは蹄が薄い
ため、妊娠で体が重くなると蹄に負担がかかり、痛みで歩くのがやっとの状態になることも
ありました。繁殖牝馬の仕事は仔馬を産むこと、それができなければ生きてはいけません。
痛みと闘いながらも繁殖牝馬としての仕事をこなす姿に心が痛みました。それでも毎年出産
と子育てを頑張ってきたエレガントフラッグでしたが、高齢の繁殖牝馬に多い子宮内水胞に
より受胎しにくい体になってしまったということで、2023年の子育てを最後に繁殖を引退し
廃用になることが決まりました。
牧場の従業員さんは日々馬たちを大切にお世話しています。毎日接していると面倒くさい癖
があったり、どうでもいいこだわりがあったり、好きなことも嫌いなこともそれぞれで本当
に可愛いのです。しかし、悲しいことですが繁殖牝馬は出産ができなくなれば廃用。馬産地ではそれはやむを得ないことです。競走馬として全力で走り、繁殖馬として命懸けで出産子育てをし、人間のために頑張ってきた馬たちが、もう使えなくなったから廃用という現実をどうしても受け入れることができずに悩みました。
エレガントフラッグには7年前に牧場で働いていたときに出会いました。人にも馬にも媚び
ず、嫌なことは嫌とはっきり主張する性格で放牧地ではリーダーでした。引退馬協会のフォ
スターホースのエアリカコとは一緒の放牧地で子育てをしていた仲間です。
エレガントフラッグはそこでもリーダーでしたが何故か下から2番目のリカコにだけ弱く、
不思議でややこしい関係性で私たちを笑わせてくれたのでした。子供たちも仲良しでいつも
一緒に遊んでいました。リカコの最後の子どもの親友はエレガントの子で、リカコにとって
もエレガントフラッグは最後のママ友です。
今回牧場のご厚意でエレガントフラッグを譲っていただけることとなりました。これまで 助けられなかった繁殖牝馬たちがたくさんいます。大切な馬が横積みの馬運車にのせられ て行くのを何度もやるせない思いで見送ってきました。それすらかなわず、ありがとうも伝えられないままお別れになってしまった馬たちもいます。その子たちの分までエレガントフラッグには穏やかで幸せな余生を送ってほしいと思っています。
エレガントフラッグが余生を安心して送ることができるよう「エレガントフラッグの会」を設立することを決めました。エレガントフラッグの余生を共に見守り、ご支援くださいますようお願申し上げます。
今回、エレガントフラッグの会の設立にあたりたくさんの方々が助けてくださいました。直ちに馬房を空けなければならない危機的な状況で、急な一時預かりを受けてくださった引退馬の牧場様、忙しい中馬運車を提供し移動を助けてくださった牧場様、私たちの相談にのりアドバイスしてくださった引退馬協会様、私たちを勇気づけ励ましてくださった方々に心から感謝致します。